ヨセの基礎 — 先手と後手、そして大きさ
ヨセは退屈だという理由で、いちばん後回しにされがちです。ところが初級・中級の対局で勝負が分かれるのは、たいていここです。中盤までうまく打っても、ヨセで10目ずつこぼしていては勝てません。
ヨセとは何か
対局はおおむね三つの段階に分かれます。布石で場所を分け合い、中盤の戦いで優劣を競い、ヨセで境界線を確定させます。
ヨセの段階では、どこが誰の地かはすでにだいたい決まっています。残っているのは境界をどこまで押し込むかです。一手ごとに数目ずつ行き来し、そうした場所が盤全体に何十か所もあります。全部合わせると20〜30目になることも珍しくありません。
ヨセが大切な理由はもうひとつあります。計算できる分野だということです。布石には感覚が、戦いには読みが必要ですが、ヨセは大きさを数えればよいのです。学んだ分だけ正直に返ってきます。
先手と後手 — ヨセの核心となる考え方
ヨセを理解するには、まずこの二つの言葉を知る必要があります。
先手
自分が打ったときに相手が必ず受けなければならない手です。相手が受ければ、次の番はまた自分に回ってきます。つまり一手打っても主導権を失いません。
後手
自分が打っても相手が受けなくてもよい手です。相手はほかの大きな場所に向かいます。一手打って主導権を渡したことになります。
先手はタダに近いものです。同じ大きさなら、先手のヨセを先に打つのが無条件で得です。打っても手番が戻ってくるのですから。だからヨセの第一原則は「先手から」です。
ただし注意点があります。相手が受けなくてもよいのに習慣で受けてしまうと、その手は相手だけの得になります。相手の打った手が本当に受けるべき手なのか、毎回確かめる習慣が必要です。受けなくてよい手を受けるのは、初級・中級で地をこぼすよくある経路です。
ヨセの大きさの数え方
大きさを数える基準は簡単です。自分が打ったときと、相手が打ったときの差です。
ある場所に自分が打てば自分の地が3目増え、同じ場所に相手が打てば相手の地が3目増えるとしましょう。この場所の大きさは3目ではなく6目です。自分が打てば、相手が得るはずの3目まで防ぐことになるからです。
初心者がいちばんよくやる失敗が、この2倍を見落とすことです。「ここに打てば2目増えるな」とだけ見て済ませると、実際には4目の場所を逃すことになります。
先手と後手を大きさに反映する
同じ6目でも、先手と後手では価値が違います。大まかな感覚として、先手のヨセは同じ大きさの後手の約2倍の値打ちがあると考えればよいでしょう。
理由はこうです。後手で6目稼げば、相手が次の大きな場所を持っていきます。先手で6目稼げば、その大きな場所も自分が打てます。実質的な差はそれほど大きいのです。
そこでヨセの順序は、おおよそ次のように整理できます。
- 両先手の場所 — どちらが先に打っても先手。いちばん急ぎます。
- 自分が打てば先手の場所(片先手) — 相手にとっては後手。必ず自分が先に。
- 大きな後手 — 大きい順に。
- 小さな後手、1目の場所 — 最後に。
実戦でよく出るヨセ
ハネツギ
いちばん基本的で、いちばんよく出てくるヨセです。境界線から相手側へ一路ハネて、相手が止めたらツギます。
辺の一線・二線でのこの手はたいてい先手です。相手が止めなければさらに入り込めるので、受けざるを得ないからです。先手であるうえに大きさもそこそこあるので、ヨセでの優先順位は高めです。
初級・中級では、これひとつを適時に打つだけでも一局ごとに数目ずつ稼げます。逆に相手に先にハネられれば、その分を失います。
ケイマ・コスミのヨセ(斜めに押し込む)
境界から斜めに押し込んでいく手です。ハネツギより少し小さいものの、後手にならないことが多く効率の良い手です。
隅のヨセ
隅はヨセがいちばん大きい場所です。二つの辺が交わる場所なので、一手で両側の境界が同時に動くからです。盤を見渡すときは、隅から見る習慣をつけるとよいでしょう。
コウを使ったヨセ
境界でコウになる形がときどきあります。コウはコウ材の争いにつながるので、大きさの計算が複雑になります。初級・中級では確実な場所から片付けて、コウは後回しにするほうが安全です。
ヨセの土台は読み 境界で何目かを数えるには、結局何手か先を読まなければなりません。詰碁6,125問を難易度別に無料で提供しています。ヨセで地をこぼす癖
受けなくてよい手を受ける
先ほど述べたことです。相手の打った手に反射的に受けていると、相手はずっと先手を取り続け、自分はずっと引きずられます。「受けなかったらどれだけ損か」を数えてみて、ほかの場所のほうが大きければ手を抜くべきです。
小さな場所から打つ
目の前に見える場所から先に打つ癖です。ヨセは大きな場所からが原則です。1目の場所は本当に最後に打ちます。
すでに決まった場所にもう一手打つ
不安になって念のためにツいでおくことです。切られる危険が本当にあるならツぐべきですが、ないのにツげば一手を丸ごと捨てることになります。ヨセの段階での一手は数目の価値があります。
形勢判断をしない
いま何目差かわからなければ、どう打つかも決められません。リードしていれば安全に、負けていれば無理をしてでも勝負をかける必要がありますが、数えてみなければその判断自体ができません。大まかにでも数えてみる習慣が必要です。
コミを忘れない
地を数えるときにコミを忘れると、判断がまるごと狂います。黒が先に打つ有利さを相殺するために白に加える目数で、このサイトを含め日本・韓国ルールではふつう6目半を使います。
半目がつくのは引き分けをなくすためです。ですから、ヨセで1目を惜しむことが実際に勝負をひっくり返します。「半目勝ち」という言葉はだてにあるわけではありません。
ルールや地の計算の手順そのものがあやふやなら、先に囲碁のルール完全ガイドを読むことをおすすめします。
まとめ
- 大きさは2倍で数える。自分が得る地 + 相手が得られなくなる地。
- 先手から打つ。打っても手番が戻ってきます。
- 相手の手に反射的に受けない。受けなかったときの損を数えてみます。
- 大きな場所から、隅から。1目の場所は最後です。
- コミを入れて数える。いま勝っているかがわかってはじめて方針が立ちます。
ヨセは派手ではありませんが、いちばん確実に棋力を上げてくれる分野です。中盤で大石を取ることはそう頻繁には起きませんが、ヨセは毎局必ずやってくるからです。