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定石入門 — なぜ隅から打つのか

プロの対局を見ると、第一手はほぼ必ず隅です。偶然ではなく、計算の結果です。なぜ隅なのかを理解すれば、定石を暗記しなくても序盤を打てるようになります。

囲碁初中級 · 読了目安 約11分

なぜ隅から打つのか

地を作る効率は隅 > 辺 > 中央の順です。理由は壁にあります。

隅では盤の二つの端がすでに壁の役割をしています。二方向をふさぐだけで領域が完成します。辺では一方向が壁なので三方向をふさぐ必要があり、中央は壁がないので四方向すべてを囲わなければなりません。

大まかな感覚で言えば、同じ15目ほどの地を作るのに、隅なら石六、七個で足りますが、中央ではその二、三倍が必要です。序盤に隅を占めることは、それだけ効率が良いのです。

ですから序盤の順序はおおむねこうなります。四つの隅を分け合い → 辺にヒラき → 中央は最後に整理します。この順序を守るだけで、初心者のレベルではかなりの得になります。

第一手をどこに打つか

隅に打つ場所は、いくつかに整理されています。それぞれ性格が違います。

星

隅から斜めに四番目の点で、盤上に印のある場所です。いちばん広く使われています。

星は速さと勢力の手です。一手で隅を完全に占めることはできませんが、足が速く、中央方向への影響力が大きい手です。相手が隅に入ってきたら、実利は譲って外側の厚みを得るという流れが自然です。

入門者に星をすすめるのは、変化が比較的単純だからです。定石を知らなくても大きな事故が起こりにくいのです。

小目

星より一路低く、一路横の場所です。隅に寄っています。

小目は実利の手です。もう一手足せば隅がほぼ確定します。そのかわり向きが片側に偏るので反対側が空き、変化も星より複雑です。

高目と目外し

小目よりも高い、あるいはより外側の場所です。実利よりも勢力を強く志向します。変化が難しいので、入門段階であえて使う必要はありません。

三々

隅から斜めに三番目、いちばん低い場所です。一手で隅の実利を確定させます。そのかわり低いので、中央への影響力はほとんどありません。かつては消極的だと評価されていましたが、AIの登場以降に見直され、今ではよく打たれています。

カカリ — 相手の隅に近づく

相手が隅に一手打ったとき、その隅を放っておくと、相手がもう一手足して完全に占めてしまいます。そこで近づいて牽制します。これがカカリです。

星へのカカリは、ふつう小ゲイマで近づく形が基本です。ここで相手の選択肢が分かれます。

どれが正しいと決まっているわけではありません。周りの配置によって変わります。近くに自分の石が多ければハサミが有利で、相手の勢力圏なら受けて安定するほうがよいでしょう。

ハサミ — 受けずに立ち向かう

カカリを受けずに反対側から攻めるのがハサミです。カカってきた石が安定する場所を先にふさいでしまう手です。

ハサミには幅があります。カカリの石から一路空ければ近いハサミ(一間バサミ)、二、三路ならゆるいハサミです。

選ぶ基準は自分の周りの石です。近くに自分の石があって支えになるなら近いハサミが成立し、周りが空いていればゆるいハサミが安全です。自分の石が弱いのに近いハサミを打つと、相手が反撃してきたときに両方とも弱くなります。

ハサまれたときは。カカっていってハサまれたら、道は三つあります。隅に入り込んで生きる道、中央にトんで逃げる道、そしてその石を捨ててほかで取り返す道です。初級・中級では捨てる選択をほとんどしませんが、小さな石ひとつにこだわって盤全体を失うよりましなことが多いのです。

三々入り — 星の宿命

星に石がひとつだけなら、相手は隅の三々に入ってくることができます。星は四線なので、その下が空いているからです。

このときの結果は決まっています。入った側が隅の地を得て、ふさいだ側が外側の厚みを得ます。どちらが得かは周りの配置次第です。自分の勢力圏が広ければ厚みは大きく、相手の石が近くに多ければ厚みの使い道がなく損になります。

ふさぐ方向も選択です。広いほうに向けて壁を築くのが原則です。壁を築いてもその先が狭ければ、石が重なって効率が落ちます。

AIの登場以降、三々入りは序盤からよく打たれるようになりました。以前は「早すぎる」と見られていましたが、実利を確実に得る価値が見直されたのです。

定石とどう向き合うか

定石とは、隅で黒白が打ち合う、互いに大きな損をしないと検証された手順です。何百年もかけて磨かれてきました。

ところが、初心者が定石を暗記すると、かえって強くならないことがよくあります。それには理由があります。

定石はその場所だけの最善

定石は周りに何もないという前提で計算された結果です。実際の盤では周りに石があり、そうなると同じ定石が損になることもあります。「定石どおりに打ったのに、なぜ負けるのか」という状況はここから生まれます。

手順より理由が大切

定石を見るときは、「この手はなぜここなのか」を問わなければなりません。切られないため? 相手を低く押さえるため? 実利を得るため? その理由がわかれば、状況が少し変わっても応用できます。逆に手順だけを覚えると、相手が定石を外れた瞬間に何もできなくなります。

相手が定石を外れたとき

初心者の対局ではよくあることです。慌てる必要はありません。定石を外れた手には、たいていどこかに弱点があります。その弱点を見つけてとがめればよいのです。見つからなければ無理をせず、しっかり打てば損はしません。

入門段階での現実的なアドバイス。定石は二つ三つ知っていれば十分です。星にカカられたときの受け方をひとつ、ハサミ方をひとつくらい知っていれば、初級・中級では問題ありません。その時間に詰碁を解くほうが、棋力向上にはずっと早道です。

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序盤で覚えておきたい三つのこと

定石を知らなくても、この三つさえ守れば序盤で大きく後れを取ることはありません。

  1. 隅 → 辺 → 中央の順に。四つの隅が落ち着く前に中央に打たないこと。
  2. 大きな場所から。まだ誰も手をつけていない広い場所が、たいていいちばん大きいです。すでに落ち着いた場所に一手足すより、空いている場所のほうが大きいのです。
  3. 急場は大場より先。自分の石が取られそうなら、まずそれを解決します。どんなに大きな場所でも、大石が死んでしまっては意味がありません。

三つ目が特に大切です。「大場より急場」は、囲碁でいちばんよく引用される格言のひとつです。

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